桃農家からアイスクリーム専門店へ——新たな挑戦 2025年7月オープン|丸亀市飯山町

インドネシアでアイスクリームを提供する姿(写真左:鶴岡さん) 写真提供:鶴岡さん

2025年7月、丸亀市に新しいアイスクリーム専門店が誕生します!

お店を手掛けるのは、モモの産地として有名な丸亀市飯山町まるがめしはんざんちょうで桃農家を営む鶴岡つるおか達也たつやさん(以下、鶴岡さん)です。

なぜ桃農家がアイスクリーム専門店を開くのでしょうか?その背景には、地域の未来を見据えたある想いがありました。

「昔ながらの農業をするだけでなく、新しい形でモモや丸亀の魅力を伝えたいんです!」(鶴岡さん)

本記事では、鶴岡さんが挑むアイスクリーム事業とその夢に迫ります。

写真提供:鶴岡さん

桃農家・鶴岡達也さんのプロフィール

  • 丸亀市飯山町はんざんちょうにある実家は代々続く桃農家
  • 大学卒業後、福岡県で建設コンサルタント業に従事
  • その後、廃棄されるモモの可能性を探るために転身を決意
  • 高松のアイスクリーム専門店で修行を積む
  • 2025年7月「アイスクリーム専門店」を開業予定

鶴岡達也さんにインタビュー ~現在~

ここからは、アイスクリーム事業に込めた想いと挑戦について、鶴岡さんにお話を伺います。

丸亀市飯山町の特産品「モモ」を活かしたアイスクリーム事業

ーーーアイスクリーム事業をはじめようと思ったきっかけをお聞かせください。

鶴岡さん:
実は、桃農家特有の食品ロス問題を解決しようと思ったのが発端です。

丸亀市飯山町で栽培されるモモは全国シェア9位を誇り、香川県内の生産量の約7割を占めています。

香川県は日照時間が長く、降水量が少ないため、モモの栽培に適した環境が整っているんです。

特に飯山町はんざんちょう飯野山南麓いいのやまなんろくには水はけのよい土壌が広がり、甘くみずみずしいモモが育つんですよ。

この地域のモモは“飯南(はんなん)の桃”と呼ばれ、かつては朝廷にも献上された歴史ある逸品。その上品な甘さと香りは、多くの人を魅了してきました。

しかし、その高品質なモモであっても「形が悪い、傷がついている」といった理由で市場に出せないモモの方が実は多いのです。

せっかく育てたモモが見た目だけで廃棄されてしまうのは本当にもったいない。

そこで、食品ロス削減の観点からも、こうしたモモを有効活用できないかと考え、アイスクリーム事業を立ち上げることにしました。

丸亀市飯山町でそだてられたモモ 写真提供:鶴岡さん

農業と地域の未来を見据えた決断

ーーー元々、建設コンサルタントをされていましたよね。方向転換には、なにかきっかけがあったのでしょうか?

鶴岡さん:
建設コンサルタントの仕事で和歌山県に勤務をしていたのですが、和歌山県は西日本最大のモモの産地なんです。

仕事をつうじて、和歌山の桃農家との交流が生まれたのですが、実家が桃農家だったこともあり、地域資源を活かしたビジネスの可能性を感じ興味が強まったのがきっかけですね。

「若いうちに挑戦を」と決意し、平日は建設コンサルタントの仕事をつづけながら、週末は桃農家で働くという生活を1年続けることに…。大変でしたが、貴重な体験でしたよ。

その経験を通して、モモを生産するだけでなく、新しい形で価値を生み出せるのではないかと考えるようになり、その思いがやがて地元・丸亀市でのアイスクリーム事業へとつながっていきました。

収穫されたモモ 写真提供:鶴岡さん

モノをつくって消費者に届けるよろこび

ーーーそのような過酷な生活に自分を突き動かしたものや、なぜそれができたのかを教えてください

鶴岡さん:
土日返上で仕事ができたのは、香川の実家の桃農家を守るためですね。地域の農業をささえ、美味しいモモを届ける使命感があったからです。

それに、和歌山の桃農家さんでの経験や体験から、モノを作って消費者に届けることは、やはり人に喜ばれるものだと改めて気づかせてもらったような感じですね。

桃農家の現状と課題

ーーー桃農家の現状をお聞かせください。

鶴岡さん:
近年は高齢化や担い手不足の影響で、桃農家の数が減少していますね。

モモを育てる仕事は、健康的で体によいと多くの人が感じています。自然の恵みを活かし、美味しいモモを届けるやりがいのある仕事です。

しかし、モモの栽培は手間がかかり、とても大変な作業でもあります。

これが岡山のシャインマスカット農家だったら、手放しに喜んで引き継いでくれる人が沢山いますけどね。

時間と労力と対価という部分で、農作物はモノによって全く違うので、モモに関してはぜひやどうしてもという考えの農家は少ないんじゃないかと思いますよ。

ーーーそれでもご家業を継いで挑戦しようと思われたのはなぜでしょうか。

鶴岡さん:
和歌山の桃農家さんが成功している姿を見て、可能性を感じたからですね。「チャンスは転がっている」と実感し、挑戦する決意が固まりました。

鶴岡達也さんにインタビュー ~未来~

「飯南の桃×アイスクリーム×海外市場」——新たな挑戦

ーーーモモの販路拡大で課題に感じていることはどんなことがありますか。

鶴岡さん:
香川のモモは地理的ハンデがあるため、広く知られていません。

それは、モモは輸送の衝撃によわい(簡単に傷ついてしまう)特性と、冷蔵保管によわい性質があるからです。ですから、市場がある本州から離れている香川はそれだけで不利なんですよ。

他県のブランド桃にも引けを取らない美味しさなのに、もったいないと思いますね。

例えば、隣の岡山県では「清水白桃」というブランド力で全国に販路があります。大規模市場の大阪府は、隣の県である和歌山県産が占めているんですよね。

それにくらべて香川県は、ほとんどが地元で消費されます。余剰分は、競合の少ない九州で販売されているんですよ。

ーーーそうなんですね。生産地によりそのような差があるとは全く知りませんでした。

鶴岡さん:
日本市場の競争が激しく、地理的なハンデもある中でどのように差別化を図るか?

そう考えたとき、日本市場にこだわらず、海外のニーズに合った商品を開発することで新たな市場を切り開くべきだと考えました。

最初のターゲットはインドネシア市場

ーーー海外進出を考えるにあたり、どこか目星をつけている地域や国はあるのでしょうか?

鶴岡さん:
東南アジア市場、特にインドネシア・台湾・ベトナムへの進出を視野に入れています。

ーーーアイスクリーム市場といえば欧米が主流で、東南アジア市場のイメージはありません。あえてそこを選ぶのは戦略でしょうか?

鶴岡さん:
はい、まさに戦略的なアプローチですね。

東南アジア市場はまだ成長段階にあり、アイスクリームは欧米ブランドのイメージが強いのが特徴です。

例えば、3ヶ国のうちのインドネシアでは外資系アイスクリームブランドが主流で、ローカルの冷菓子は主にかき氷のようなものが多いんですよ。

外資系ブランドのアイスクリームはイメージ戦略が強く、僕が求める「中身=本当のおいしさ」が足りないと感じています。

鶴岡さんが考える中身とは

ーーー鶴岡さんが考える「中身=本当のおいしさ」とはどのようなものでしょうか。

鶴岡さん:
世界のアイスクリーム市場はイタリアが中心で、製造機器もほとんどがイタリア製です。

インドネシア市場では、高所得層向けにイタリアブランドのアイスクリームが流通し、見た目のブランドイメージが重視されています。

それは僕から言わせるとただのイメージ販売で、中身がないように思えるんですよね。

台湾では地元ブランドのアイスクリームが高品質で評価されており、イタリアブランドに依存しない市場が形成されています。

地元ブランドが確立されている台湾よりも、未開拓のインドネシア市場の方が大きな可能性を秘めていると思っていますよ。

挑戦し続ける中で生まれた葛藤と情熱

ーーー挑戦のなかで葛藤はなかったのでしょうか。

鶴岡さん:
「このままで良いのか?」という疑問を抱えながらも、新たな可能性を模索し続けていました。

実際にインドネシアを訪れ、現地の人々と交流し、桃農園を視察することで、市場の可能性を肌で感じましたね。「この人たちに自分のアイスを届けたい!」そんな強い想いから、この組み合わせに確信を持ちました。

本質的に価値のある商品をつくりたい

ーーー海外を目指す理由がほかにもあれば教えてください。

鶴岡さん:
モモ単品でブランド化が難しいなら、他にないものをいくつか組み合わせて新たな価値を創造できないかと考えています。

また、”飯南の桃”を活かし、アイスクリームと組み合わせた独自の商品を海外市場に展開することで、丸亀の地域全体の価値向上を図り地域ブランド化を目指したいとも考えているんです。

価値の創造と向上、それが海外を目指す理由ですね。

ーーーそこまで考えられているのですね。中身があるものをつくりたい理由をお聞かせください。

鶴岡さん:
ただのブランドイメージではなく、本当に美味しいアイスクリームを追求し、人々に喜ばれる商品を提供したいと僕は考えています。

人とのつながりを大切にしながら、本質的に価値のある商品を作り上げるスタイルが自分に合っていると感じていますね。だからこそ、味のクオリティで勝負したいです!

海外展開と技能実習生の将来

ーーーほかにはどのようなことをお考えですか。

鶴岡さん:
農業に関わらず、外国人技能実習生という形で、多くの外国人が日本の技術や知識を学ぶために訪れる制度がありますよね。

実際、実習生を受け入れる友達がいて、ベトナム人やインドネシア人がお弁当のパッキングするところに働きにきています。お弁当のパッキング作業を否定するわけではありませんが、帰国後にその経験をいかせるのか疑問です。

20代や30代の貴重な時間を日本で過ごした後、帰国時にどんなスキルや知識が残るのかを考えるべきと思うんですよ。

日本が好きで日本での実習生活は楽しかったという人もいる一方で、家族のためやお金稼ぐために働きに来てる人たちもいます。その人たちに本当に技術や知識が身に付いて帰っているのかという視点で見ると、僕はちょっとよくわからない。

だから僕は、僕のお店を現地につくって、日本で技術や知識をまなんだ人が国に帰っても働けるような仕組みをつくりたいです。現地でビジネスを展開できる環境を整えることで、より持続可能な成長が見込めると思いますね。

そこに日本に旅行に行ったことがある人とか、日本にご縁のある人がお客さんとして来てくれるんだったら、すごくシナジーがある事業になるんじゃないかなとも思っています。

逆に、海外で僕お店のアイスクリームを食べた人に、「いつか丸亀を訪れてみたい!」と思ってもらえるようなきっかけになって欲しいとも考えていますよ。

目指すのは「丸亀市観光の新たな目玉」

ーーー丸亀市で事業にどのような未来をえがいていますか?

鶴岡さん:
「モモのアイスクリームを楽しみに丸亀に行こう!」と思ってもらえるような、新たな観光資源を作りたいと考えています。

さらに、丸亀市の魅力を発信できる人と連携し、地元のよさを伝えられる仕組みをつくることで、地域全体を盛り上げたいですね。

写真提供:鶴岡さん

ーーーそれは興味深いですね。私も丸亀市を盛り上げたいと考えているので、とても刺激をうけました。

鶴岡さん:
「四国へ行こう!」と考えている人が、丸亀市を通りすぎるだけでなく、滞在を楽しめるようにしたいです。

地域活性化のためにも、ぜひ丸亀市に宿泊し、魅力を存分に味わってほしいです!

ーーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

鶴岡さん:
桃農家の挑戦として、アイスクリーム事業をスタートさせます。”飯南の桃”の魅力を多くの人に知ってもらえるよう、全力で取り組んでいきます!

まとめ

目先の利益にとらわれるのではなく、だれひとり取り残さない仕組みや新たな価値を創造する姿勢は、持続可能な世界を実現するいっぽといえるでしょう。

丸亀市の魅力が高まり、国内外から人々が集まる未来を想像すると、なんだかワクワクしませんか。

2025年7月。”飯南の桃”をつかった魅力たっぷりのアイスクリーム専門店オープンが、いまからとても楽しみですね!

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丸亀っ子(ki-ki-ki)
香川県生まれ。「さぬきうどん」「丸亀うちわ」「骨付き鳥」が有名な丸亀市で生まれ育ちました。十数年ほど丸亀を離れていましたが、今は再び大好きな丸亀で生活しています。 子育てをしていて思うことは、親だけでなく関わってくださる地域の人々・文化・土地に根付く風習などすべてが影響し、人が育つということです。 Webライターとして駆け出しですが、少しでも伝わるような文章を心がけたいと思っています。