丸亀市で絵画・造形教室を25年以上いとなむ亀井敬子先生(以下、敬子先生)。
ご主人の主宰されている書道教室で硬筆と書道を教えながら、ご自身でも絵画造形教室で絵画や工作などの指導に情熱を注いでこられました。
本記事では、敬子先生のご略歴や現在、そしてこれからの挑戦についてご紹介します。

街中で目にするアート作品。それは、誰かが心を込めて創り、描いたものです。そして、それを展示し、多くの人に見せることで、その美しさや込められた想い、感動を見ていただいたすべての方と共有することができます。
もくじ
亀井敬子先生のご略歴
まずはじめに、敬子先生のご略歴はこちらです。
1954年 | 多度津町に生まれる |
1973年 | 丸亀高校卒業 |
1976年 | 女子美術大学(産業デザイン科工芸専攻)卒業 柚木沙弥郎先生ほか柳悦孝先生・四本貴資先生に学ぶ |
1976年 | (株)高島屋就職 |
2000年 | 絵画造形教室「アトリエK」主催 |
2001年 | 丸亀初代婆娑羅大使就任 市の行事に参加したり市内の幼稚園・保育所・小中学校・大人の団体で1年間アート講座を担当 |
2002年~2018年 | 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館評議員就任 |
2024年 | 丸亀市文化推進賞受賞 |
2025年6月~ | 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館理事就任 |
亀井 敬子(かめい けいこ)
香川県仲多度郡多度津町出身。
1977年に女子美術大学産業デザイン科工芸専攻卒業。型染めの第一人者である柚木沙弥郎に型染めを学ぶ。
また、型紙や布目を通してインクを刷り取る印刷技術のシルクスクリーンなどは四本貴資先生。糸を縦横に組み合わせてつくる技法の織は柳悦孝先生に学んだ。
シルクスクリーンは孔版印刷の一種で、メッシュ状の版に孔(あな)を作り、孔の部分にだけインクを落として印刷するとてもシンプルな印刷方法です。
中学・高校の美術教員免許を取得。同年、高島屋日本橋本店に就職したが、家庭の事情で地元・多度津町に帰郷し、母親が営む「岡古美術店」を手伝う。
1980年、書家・亀井法悦氏と結婚。3姉妹を育てながら、法悦氏の書道教室での指導や個展の企画運営に携わる。さらに、「珊々会書作展」や実家の「岡古美術店コレクション展」の企画も担当。
子育て中に8名の子どもたちを6年間。絵画・造形指導しJR丸亀駅で作品展を開く。

上記をきっかけに2000年2月より、夫の書道教室の中で絵画造形教室”アトリエK”をスタート。

現在は丸亀市を拠点に、県内5か所で子どもから大人まで幅広い世代に絵画・造形を指導しています。
近年は「自然環境保全」や「平和」をテーマにしたアート活動を積極的に展開。
教室の理念
- 幼児から大人まで一人ひとりの個性を大切に想像力・色彩感覚・造形力を伸ばす
- 教室のみんなと仲良くともに学ぶ
を信条に、おおきな宣伝広告ではなく、口コミや紹介で広まってきた絵画・造形教室です。

アートを通じた社会貢献活動
敬子先生は、地域社会(県内各所の公共の場所)で、主に子ども達とつくった作品を集めて展示することで、地域社会に根差した”環境問題”や”平和についての意識”を啓発し、いっしょに楽しみながら考えて行動しようと呼びかける活動を展開しています。
1. 地域に根ざした展示活動
- ユープラザうたづ(2001年〜)
- 「かがわ文化芸術祭」参加作品として、毎年クリスマスの空間展示を企画
- JR丸亀駅2F企画展示ギャラリー(2001年〜)
- 毎年1回、教室生徒による作品展を開催
- 瀬戸内国際芸術祭開催時は、「瀬戸内海はみんなの宝物であること」「ようこそ丸亀・ようこそ本島」をテーマに装飾を実施 丸亀港合同待合所でも同時展示
- NHK高松放送局ふれあいギャラリー(2010年〜)
- 毎年作品展を開催
- 丸亀市猪熊源一郎現代美術館『MIMOCA』(2011年~)
- 2011年10月:「みんなで選ぶミモカアート賞」出展 MIMOCA開館二十周年記念
- 2012年11月:「みんなで選ぶミモカアート賞」出展 MIMOCA開館二十一周年記一
- 2016年10月:「みんなで選ぶミモカアート賞」出展 MIMOCA開館二十五周年記念
- 道の駅うたづ海ホタル(2012年〜)
- 「カレンダー作品コンクール展示」を共催したり夏の作品展を開催
- 2022年から「アジアの子どもたちの絵日記展三菱アジア子ども絵日記フェスタ」を丸亀ユネスコ協会と共催
- マルタスでの企画展(2022年〜)
- 2022年8月:「広げよう平和の心」— 2021~22 三菱アジアこども絵日記フェスタ参加作品展示
- 2023年7月:「世界中みんな仲良く」— ロシアによるウクライナ侵攻をテーマに参加型アート展示
- 2023年8月:「SDGs・海の豊かさを守ろう」— プラスチック廃材を使った造形作品展示
- 2024年8月:「SDGs・陸の豊かさを守ろう」— 私たちの作った未来に守りたい森をテーマに展示
- 2025年8月:「広げよう平和の心」— 2024~25 三菱アジアこども絵日記フェスタ参加作品展示

「みんなで選ぶミモカアート賞」出展 MIMOCA開館二十一周年記念 出展作品 写真提供:亀井敬子先


「みんなで選ぶミモカアート賞」出展 MIMOCA開館二十五周年記念 出展作品 写真提供:亀井敬子先





2. ボランティア活動と社会貢献
- 瀬戸内国際芸術祭関連展示(2013年・2016年・2019年・2022年)
- マイクロプラスチック問題をテーマにおもてなしの心を込めた歓迎作品展示(丸亀港・JR丸亀駅)
- 丸亀市立図書館への作品寄贈
- 巨大マトリョーシカ製作作品を寄贈 クリスマスにはアドベンチャーボックス26作品を貸出・展示
- こどもとおとなの医療センターへの展示提供・指導
- クリスマス作品の展示
- 「アドベンチャーボックスでクリスマス」や「聖なる光のクリスマス」を開催
- 精神科病棟へ不定期で絵画・造形講座開催
- 県立丸亀競技場親水公園での平和イベント
- 「平和の鐘を鳴らそう」丸亀ユネスコメイン行事— 生徒と共に「平和」をテーマにしたフラッグTシャツを制作
- ユープラザうたづのモニュメント制作
- 開館10周年記念として、41名の子どもたちと「アニバーサリーゲート」を製作

これからの夢 ~平和の精神を子どもたちの心の中に築くこと・郷土の歴史文化を誇りに思う心を育てていくこと~
ーーーこれからの夢はどんなことを思い描かれていますか?
2024年10月「丸亀文化芸術推進賞」を受賞し、これからやるべきことが明確になりました。
ひとつは、丸亀ユネスコ協会に40年以上所属して学んだこと、「平和の精神」を未来の子どもたちに絶対伝えなければならないと思っています。
ユネスコ憲章前文に出てくる「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」この精神です。
もうひとつは、自分たちのアイデンティティーである郷土の歴史・文化を学んで理解し誇りに思い、それを繋げていくこと。
その為には郷土愛を育み、丸亀に生まれた人もほかからの移住者も等しくみんな大切な仲間であるをいう意識を育てることが必要だと考えています。
実現するために私の得意なアートを活かし、世代を越えて幼児からシニアまで、市民なら誰でも参加できる作品を共同で製作し、公共の場所に飾りたいです。
それにより、作った人も見た人も楽しく元気になる。街が活き活きする。活気があふれる。ステキな循環だと思いませんか?
その実践として、以下のことを実施したいのです。
2026年9月完成予定の丸亀市民会館『THEATREMAdo(シアターマド)』をすべての市民のものであるという意識の向上にむけ
- オープニング時に飾る”祝祭のモニュメント”を世代を超えて市民のだれもが参加できるというかたちでつくりみんなで祝いたい
実現できることになったら、ぜひ祖父母・親・子の三世代の方にご参加いただきたいです。
これが直近で叶えたいと思っていることです。ぜひたくさんの方々に興味を持っていただきたいですね。
誰かに指示される仕事ではないからこそ、好きであることが大切
ーーー活動を続けてこられた上で大変だったことや大切にしていることを教えてください。
好きなことを仕事にしているので大変と思ったことはありませんが、主人が度々病気をしたり不自由になったことで、両立が苦労だった時もありました。
母の介護も少しありました。しかし、それは、皆が当たりまえに経験することですから。
誰かに指示されてする仕事ではないからこそ、好きであることが一番大事。心が折れない限り、美術の道は続けられます。
続けていく中で、美術の世界では繊細な感性が求められます。ですから、常日頃から五感を鍛えることを心がけています。
新しいものを見たり、季節の移ろいを楽しむ。できる範囲でいろんなジャンルの音楽を聴いたり舞台芸術に足を運んだりもします。
丸亀市猪熊源一郎現代美術館『MIMOCA』だけでも、現在までに150を超える企画はすべて観させていただいております。有難いことです。
ーーー教室はいつごろから始める決心をされたのでしょうか。
20歳の時に書道家を決意した主人も最初は会社員でしたが、友人が先に書道教室を始めたことをきっかけに退職し、地元で教室を開くことを決意しました。
義母は小・中学校で美術を教えており、その経験も活かして生徒を集めました。美術と書道の両方を教える環境が整い、私たちの教室が本格的に始まったんです。
私も子どもたちが中高生になった頃から教室運営を始めることを決意し、少しずつ軌道に乗せていきましたね。
すごく深刻に悩んだわけではありませんが、多くの方が支えてくれたことに感謝しています。
素直に感謝を伝えることはありませんでしたが、年を重ねるにつれ、義母や実母、周囲の方々が支えてくれていたことを強く感じるようになりましたね。
たくさんの支え・たくさんの出会い(幼児からシニア世代まで)があったからこそ、今の自分があります。
70歳になって、次の世代に何が残せるかなあと考える様になりました。「アートを通して良い精神」を伝えられるように努力したいです。
絵画造形教室を通してこれから伝えたいこと
ーーーこれから先、絵画造形教室を通して伝えたいことを教えてください。
アートは、直感的に理解でき言葉を使わなくても通じることができます。創造的な表現や感情の表出を通じて他者と共有し繋がることができるのです。
そこには、人種や年齢・性別など全く無関係。
主人や自分の仕事を通して、三世代に渡りお付き合いさせていただいている方も増えてきました。
先ほどもお話ししましたが、今までの経験を活かし、世代を超えて取り組めるアートを実践していきたいと考えています。
また、アートを通じて平和の精神を伝えていきたいのです。
私たちの親世代は戦争を経験しましたが、私たちはその記憶を持っていません。もちろん、子どもたちも戦争を知らない世代です。
世界中のあちらこちらで終わらない止まらない争いが沢山起きている今、特に私のできることとしてアートを通して、子どもたちの中に平和の意識を高めてもらいたいのです。
そして一番大切に思っていることがあります。「小さいころ培った感性は、人生を彩ります。」最後まで豊かに生きていくことができます。
まだまだ、これからが本番です。私は今も、これからも、新たな挑戦を続けていきますよ。