新丸亀市民会館 THEATRE  MAdo 【シアターマド】開館日の「第九」|舞台の上から僕が見た客席

内覧会時、ステージからの眺め

執筆者:TERU(テル)

香川県丸亀市に、新しい市民会館「THEATRE MAdo【シアターマド】」が誕生しました。

開館日の2026年9月6日、僕はベートーベン交響曲第九番、通称「第九」を歌う合唱団の一人として、その舞台に立ちました。

この記事では、その日、僕が舞台の上から見た景色を書いています。

いつもの客席からとは少し違う、舞台側から見た劇場の景色を楽しんでもらえたらうれしいです。

内覧会

オープン2ヶ月前、内覧会で新丸亀市民会館 THEATRE MAdo【シアターマド】を訪れた。

はじめて大ホールに入った時、新品の匂いと黒と赤のツートンカラーに胸が躍った。

内覧会時、誰もいない客席

ステージから客席まで、空間全体がとても広く感じられた。

ステージからの眺め

その劇場に、2026年9月6日、もう一度やってきた。

今度は見学するためではない。

この開館日にベートーベンの「第九」を歌う、209人の合唱団の一人として舞台に立つために。

開館日「第九」プログラムと、コーラス練習に使った楽譜

本番

僕たちはステージ右手の舞台袖にいた。

そこからステージに入り、合唱団が座る壇上の自分の席へ向かって歩きながら、客席の方をチラリと見た。

満席。

客席は人で埋まり、舞台にはオーケストラがいる。その後ろを通って自分の席の前に立った。

顔をあげると、スポットライトがまぶしかった。

やがて209人全員が揃い、4人のソリストが入ってきた。

自然と客席から拍手が起こる。

僕の席はそのソリストたちのすぐ後ろで、特にメゾソプラノの方とは1mほどしか離れていない。

2ヶ月前とは、まるで違う景色

何もなかったあの空間が、人で埋まっている。

あれほど広く感じた劇場が、今日は少し狭く感じる。

その中に、自分もいる。

出番

僕たちは、しばらく座って出番を待った。

そして、いよいよ僕たちが歌う時が来た。

「ザッ!」

椅子の動く音とともに、僕たち合唱団が一斉に立ち上がる。

そして、いよいよ最初の一声を出す。

「フロイデ!!!」

ドイツ語で、「歓喜」。

さっきまでは、目の前にいるオーケストラの演奏に聞き惚れていたが、もう見ない。

指揮者と自分の声に集中する。

練習の時とは違って、不思議と周りの声が気にならない。

息を吸って、また声を出す。

指揮者の動きを追いながら、それを繰り返す。

そんな単純なことを続けているだけなのに、身体がきつくなってきた。

気づくと、視界全体が少しぼやけていた。

周りは暗く、その中で指揮者だけが少し明るく見える。

息苦しさのせいだったのか。

ずっと一点を見続けていたからなのか。

それは分からない。

ただ、その不思議な視界の中でも、歌い続けた。

クライマックス

満員の客席は、もう僕の目には入っていなかった。

そして、僕たちが最後に歌う言葉がやってくる。

「ゲッテルフンケン!!!」

ドイツ語で、「神々の輝き」。

合唱団が歌い終わり、演奏が終わるまでにかかる時間は、ほんの15秒ほど。

その短い時間の中で、指揮者の動きもオーケストラの音も、最後へ向かってどんどん熱を帯びていく。

奏者全員が、持っている力を最後の一音へ注ぎ込んでいるよう。

僕はもう歌っていない。

ただ、その演奏を見て、聴いていた。

さっきまでの、周りがぼんやりしたような感覚はまだ残っている。

その中でオーケストラを見ていると、どこか夢の中から目の前の出来事を眺めているような、不思議な感じがした。

指揮者が振る。

オーケストラが応える。

最後へ向かって、さらに音が大きくなっていく。

その場にいる全員のパッションが、最後の一点へ向かって集まっていく。

そして、その熱量が一番高まった瞬間、

「ザン!!!」

最後の音が鳴った。

わずかな余韻を残して、その音がすっと消えた。

劇場全体を揺らすような拍手が起こった。

「ブラボー!!」

その声を聞いて客席を見ると、それまでぼんやりしていた僕の視界が一気に広がり、客席いっぱいに笑顔が見えた。

歓喜

ステージに出てきたときにも、僕はこの客席を見ていた。

そのとき見えたのは、【満員の客席】だった。

そして「第九」が終わった今、もう一度同じ場所から客席を見た。

そこに見えたのは、【満員の客席】ではなく、【笑顔と拍手にあふれ、歓喜に沸く客席】だった。

2ヶ月前、内覧会で見たとき、そこにはまだ何もなかった。

あの日、何もなかった空間が、今、歓喜に沸いている。

それが、舞台の上から僕が見た【THEATRE MAdoの客席】だった。

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未来に対して強い意欲を持っている者。 ボストン セルティックスとハードロックをこよなく愛す丸亀っ子の元コック。英語日々勉強中。座右の銘は「NO ATTACK NO CHANCE」